昨今、飲食店の予約を無断キャンセルすることが注目を集めています。予約無断キャンセルは「ノーショー(No show)」とも言われ、問題となっています。
飲食店に予約をしたのに、連絡もなくキャンセルする…それがどんな影響を及ぼすか、考えてみたことはありますか?
具体的にはどんな問題が起こるのでしょう。その理由は?
目次
無断キャンセルの被害額は甚大!年間約2000億円
飲食店の予約を、連絡なしに無断キャンセルする被害が年々増加しています。
その額はなんと、年間約2000億円と言われています。
2000億円といわれても、ぴんとこないですよね?
飲食事業の市場規模を 25 兆円、平均人件費率を 37%とすると(平成 28 年企業活動基本調査
を基に推計)、 2000 億円は、飲食業従事者全体における賃金 2%強に相当します。
「なんだ2%程度か」と思うかもしれませんが、年収が500万円だとすると2%は10万円です。10万円は決して小さな額ではありません。
無断キャンセルは飲食店の経営を悪化させるだけでなく、サービスの質の低下も招きます。それだけでなく、利用者側にもデメリットが大きいのです。どうして利用者にもデメリットがあるのでしょうか?
無断キャンセル被害の深刻さ
経済産業省の出したレポートによると、「無断予約キャンセル」と、「1、2日まえの急な予約キャンセル」を合わせて年間で13.6兆円もの被害がでているということです。
ノーショーで発生する問題
飲食店側だけではなく、利用者にもデメリットのある「ノーショー」。
では具体的に、どんな問題が発生するのか見ていきましょう。
飲食店側に発生する問題
予約を受けた店側は、その予約客のために料理の素材と席を用意して待っています。それだけでなく、サービスを提供するためのスタッフも用意しています。
それが全て無駄になるのですから当然売り上げが下がってしまいます。予約客が来なければ素材はゴミになりますし(ゴミを廃棄するのにもお金がかかります)、スタッフには賃金を支払わなければなりません。
それだけでなく、その予約が入らなければ他のお客さんを席に案内することができたかもしれませんので二重の損なのです。
「今日はこの店で晩御飯を食べよう」と思って立ち寄ってくれた常連客をガッカリさせてしまったかもしれません。その結果、常連客が離れて行ってしまう可能性もあります。
お客様側に生じる問題
店側は予約無断キャンセルで生じた損害を、他の何かで埋め合わせないと経営が成り立ちません。そのため
- 既存のメニューの価格を値上げする
- 既存のメニューの量を少なくする
- 既存のメニューの素材のランクを落とす
- 従業員の人数を減らす(サービスが手薄になる)
- 新メニューの研究を控える
などの対策を打ち出さざるを得ません。そうなると当然利用者にも悪い影響となります。
それだけでなく、
- 本来であれば取れたはずの予約が取れない
- 予約がなければ席に通してもらえたのに、満席だと断られる
- 店側が予約システムそのものを取りやめてしまうので、席に通してもらえるかは店に行ってみないとわからない
という問題も生じてきます。
なぜ無断キャンセル(ノーショー)が起こるのか
では、デメリットばかりのノーショーがどうして起こるのかを考えてみます。
手軽な予約にある、コミュニケーションの落とし穴
現在、飲食店の予約はネットが中心で、必要事項に入力するだけで可能です。しかし、これまでなら予約時にあった店舗側とお客様のコミュニケーションが減っています。
ネット予約が誕生する前は、実際に店に試食しに行ったり、電話でお店の雰囲気を聞いてから予約を入れたものですが、今はネット上でお店の画像などが簡単に見ることができます。
人間は人の顔(コミュニケーション)があるのとないのとでは、優先順位を変える傾向にありますので、顔の見えないネット予約だと無断キャンセル(ノーショー)が起こりやすくなってしまうのです。
スマホが普及するにつれネットは身近な存在になりました。いまでは手軽にできる予約は、その分、無断キャンセルしやすい(精神的負担が軽い)と考える傾向にあります。
「店から連絡が来ても無視すりゃいいや、ばっくれちゃおうぜ」という考えをもってしまうのです。
リマインドメールや電話連絡などに取り組む店舗も数多くありますが、ノーショーは増える一方です。
ノーショー(予約無断キャンセル)防止で守られる利益
ノーショーを防止することで、どんな利益が見込めるでしょうか。
材料費・光熱費
まず、無駄な資材や材料、光熱費を消費しなくて済みます。
無駄にならなかった分を他のお客様へのサービスに還元することができますし、お店の売り上げも上がります。
お店の売り上げが上がれば、メニューの値下げ、素材のランクアップなどを期待することができます。
サービス費
普段は当然と思って受けているこまごまとしたサービスも、無料では行えません。
水を出すだけでも、水道代、グラスの準備、洗浄など、多岐にわたる工程が必要ですし、人件費もかかります。
ノーショーを防止することで、飲食店に無駄な被害を与えずに済みますから、その結果こういったサービスを今後も受け続けることができるでしょう。
人材
人材は飲食店を続ける上で、なくてならない大切な存在です。しかし、お店の売り上げが圧迫されれば、最悪の場合、スタッフを解雇しなければならないこともあります。
店舗を作り上げているのは、料理だけではありません。ずっと長く勤めてくれていた調理担当のシェフ、店の雰囲気を理解した呼吸の合ったサービスをしてくれるフロアスタッフによって作り出されているのです。
こういったスタッフは一朝一夕に作られるものではありませんから、飲食店にとって有能なスタッフは「守るべき大きな財産」です。お金ではかえられない、かけがえのないものです。
まとめ:無断キャンセルで起こる問題は飲食業界全体の問題です!
飲食店に大きな損害を出す「予約無断キャンセル」。
「俺ら利用者には関係ないだろ、ばっくれてもいいよ」と考えていたかもしれませんが、私たち利用者側にも確実に不利益が生じます。
これからどのようにしていっていいか、対策を考えなければならないでしょう。