来店の無断キャンセルは賠償請求できるのか?条件や炎上しないポイントとは

増加の一途をたどる「飲食店予約無断キャンセル」が問題視されています。
無断キャンセルは「ノーショー」とも呼ばれ、飲食店に多大な被害をもたらします。

飲食店側は利用者に「賠償請求」できないのでしょうか。

いいえ、できる場合もあります!その条件や炎上しないポイントについて解説します。

無断キャンセルの損害賠償は可能!

「無断キャンセルされてしまった…このまま泣き寝入りするしかないのか…?」

いいえ、条件にもよりますが「無断キャンセルの損害賠償は可能」なんです!

驚かれる方も多いと思います。そこで、次の項で詳しく「無断キャンセルの損害賠償を可能にする条件」を解説していきます。

無断キャンセルで損害賠償を可能にする3つの条件

条件1:請求相手を特定できること

まずは、無断キャンセルの損害賠償を請求する相手が特定できることが1つ目の条件です。

相手が悪いとわかっていても、連絡が取れないのでは請求のしようがありません。

「予約の時に、氏名と連絡先を必ず聞いている」という場合でも、その連絡先は本当に正しいでしょうか?もしかしたら偽名とウソの連絡先かもしれません。

そういったことを防ぐために、予約を受けるときに「ご予約の1日前にご予約確認の連絡を取らせていただきますので、確実に連絡が取れる連絡先をお伝えください」などと、あらかじめ伝えておくのも良いかと思います。

また、氏名と電話番号が正しいものであっても、相手に「受信拒否」されたら、それからは連絡できなくなってしまいます。電話会社などに問い合わせても、その電話番号の契約者の住所など個人情報は教えてもらえません…。

ですが、弁護士に依頼した場合は電話会社からその電話番号の契約者の住所を教えてもらえる場合があります。

この制度を「弁護士会照会」といい、弁護士が依頼を受けた件を解決するために使う方法の一つで、弁護士会で「個人情報の照会が妥当である」と判断された場合に行われます。

実際に、飲食店店主が40人の宴会予約を無断でキャンセルされたため、13万9200円の損害賠償請求の裁判を起こし、東京簡易裁判所がこの請求を認める判決を出したという例もあります。

この例では、弁護士により携帯電話会社から「予約をした顧客の個人情報」を得て裁判を起こしています。

多額の損害を被った場合は、こういった手段を検討してみてはいかがでしょうか。

条件2:利益相殺していない

2つ目の条件は「利益相殺していない」ということです。

「利益相殺」というのは「損害があった場合、その原因で利益を得ているとしたら損害賠償は請求できない」という考え方です。

簡単な例を挙げて説明しますと、

  1. 宴会の予約を受けたので、コース料理の材料や席を用意して予約したお客さんを待ち受けていた
  2. ところが予約の時間になってもお客さんが来ないし、連絡もつかない…要するに無断キャンセルされてしまった
  3. 困っていたところ、「無断キャンセルされた宴会のコースと同じ内容・同じ人数」を希望する別のお客さんが来店した
  4. そのお客さんを宴会席に通し、コース料理を提供したため、お客さんから料金をいただくことができたので、店は損害を被らずに済んだ

という場合です。

このような場合、店側は損害を受けていませんから、「予約を無断キャンセルしたお客さんから費用を請求しよう」ということはできません。

実際はこのような偶然はそうそう起こりませんが、「準備した食材は冷凍状態であったため、翌日以降に別のお客さんに提供できた。そのため、冷凍された食材の分は損害を受けていない」というケースもあります。

「予約席に他のお客さんを通したので売り上げが生じ、損害は半分に抑えることができた」という場合もあります。

ケースバイケースになってしまいますが、お客さんの信用にかかわることですので「どのくらいの額を被害額とするか」は慎重に考えたほうが良いでしょう。

条件3:キャンセル料の特約がある

3つ目の条件は、キャンセル料の特約が成立している、ということです。

具体的には、予約の時に「もしキャンセルとなった場合は料金の〇割のキャンセル料をいただきます」というような確認をとっていたかどうか、ということになります。

この3つの条件を満たした場合は損害賠償を請求することが可能でしょう。

ノーショー対策レポートで今後さらに請求しやすくなる

 

年間2000億円にもなる「予約無断キャンセル」を憂慮した経済産業省は、2018年の11月に「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」と発表しています。

No show(飲食店における無断キャンセル) 対策レポート(PDF資料)

以下は対策レポートによる、「無断キャンセルに対する損害賠償の考え方」のまとめです。

キャンセルによって顧客側が飲食店側に対してキャンセルによって顧客側が飲食店側に対して何らかの損害 を与えたのであれば、債務不履行や不法行為に該当する。どちらに該当する場合でも、飲食店側は顧客側に対して損害賠償を請求することが可能であると考えられる(民法 415 条、709 条)

引用元:経済産業省ホームページ

飲食店としては非常に心強いレポートなのではないでしょうか!

やりすぎ注意?請求を炎上させないために

「よし!今度から無断キャンセルされたら、どんどん損害賠償をするぞ!」と思ったかもしれませんが、サービス業はお客さんあって成り立つもの

損害賠償をしたものの、それをSNSなどに投稿されたら…?

「あの店は客に対してエラそうな態度を取ってくる!感じが悪い!」

「なんでもかんでも請求してくる!みんなも利用しないほうがいいよ」などと炎上してしまう可能性も含んでいます。

ではどうしたら良いのでしょうか…。

根拠をきちんと示せるように準備をする

「〇月△日に、そちらが当店に予約をしたにも関わらず、連絡もなしにキャンセルされてしまった。その結果、これだけの損害が出た」という、損害賠償を請求する根拠を相手側にきちんと示せるようにしておきましょう。

そのためにも、予約時に「キャンセルする場合はキャンセル料が発生する」旨をきちんと伝え、了承をもらうことが必要となるでしょう。

キャンセル側を過度に非難しない

無断キャンセルをされた飲食店としては非常につらいですね。

ですが、キャンセルをしたお客さんのことをSNSなどで書きたてると名誉棄損に問われる場合もありますので控えましょう。

まとめ:無断キャンセルでも損害賠償はできます!

今まで泣き寝入りしていた「無断キャンセル」も、条件によっては損害賠償ができることがおわかりいただけたかと思います。

これ以上飲食店の損害を増やさないためにも、いろいろと検討してみてください!