機会損失とは!飲食店の予約キャンセルでなぜ料金が発生するのかを考える!

近頃「飲食店の予約を無断キャンセルする」ことが問題視されています。

飲食店は無断キャンセルされると多大な被害を被るため「予約キャンセル時にキャンセル料をいただきます」としているところも増えています。

「何も食べていないのにキャンセル料?どうして?」予約キャンセルに料金が発生する理由を解説します。

機会損失とは

「機会損失」とは何でしょうか。あまり普段聞かない言葉ですが…。

経済学の用語で「ある決定をしなかった、あるいは何らかの理由により決定できなかったことにより生じた架空の損失」のことを言います。

例えば「電車でアルバイトに向かう際に、鉄道事故が起こって電車が遅延してしまった。その結果遅刻してしまい、働けなかった分の時給をマイナスされた」などというケースが「機会損失」といわれます。

では飲食店が予約無断キャンセルされた場合、「機会損失」とはどんなことを指すでしょうか。

「1人3500円で4人の予約をキャンセルされたから14000円の機会損失だ」と計算するかもしれませんが、機会損失の計算はもう少し複雑です。

得られたはずの利益だけでなく、もっと多くの損害を出しているからです。それはどんな損害か…それを次の項で詳しく解説します。

飲食店の予約キャンセルが機会損失である理由

飲食店の予約問題では「キャンセルしたお客さんの予約が入っていなかったら、飲食店側が得られたかもしれない売り上げを失った」ということになりますね。

それだけでない、どんな売り上げを失っているのでしょうか。

他のお客様を断ることになる

飲食店は予約を受けると、そのお客さんの席を「予約席」として確保して来店を待っています。もし他の来客があっても「すみません、今日は予約でいっぱいなので…」と入店を断ることになります。

そうまでして席を空けておいたのに、かんじんの予約客が来なかったら…?飲食店側は「予約客から得られたであろう売り上げ」だけでなく、「予約でいっぱいだから断った利用者からの売り上げ」も失うことになり、大変な不利益をこうむります。

また、入店を断られたお客さんは他の飲食店を訪れるでしょう。

「あっちの店は予約でいっぱいみたいだけど、こっちもそこそこ美味しいしな…次からこっちの店にしようか」という具合にそこのお店が気に入って、そちらの常連客になってしまう可能性もあります。

消費できたはずの仕入れが余る

また、即座にダメージとなるのが「仕入れた食材を破棄しなければならない」ことです。

飲食店から出たゴミは一般家庭から出るゴミと異なり、事業系ゴミなどと呼ばれます。事業系ゴミは処理に費用がかかりますからダブルの損害です。

飲食店側は、流用が効くメニューを用意するなどの対策をしますが、それでも過剰に余った分は排気せざる得ません。

売り上げが無くなる・評価が下がる恐れが

予約客が訪れていれば得られた売り上げが失われるわけですから当然飲食店としては痛手となります。

予約の人数が多ければ、普段よりも多くのスタッフを出勤させているかもしれません。予約を無断キャンセルされたからといって、その人件費を払わないわけにはいきませんから、飲食店側には大きな損害が出てしまいます。

売り上げが下がり、支出が増えれば店の体力が落ちていきます。その結果…

  • 新たなメニューを開発するだけの余裕がなくなり、代わり映えのしないメニューしか出せない
  • 十分なサービスを提供できるだけのスタッフを雇うことが出来なくなればスタッフの人数を減らすことになり、その結果としてサービスの質が落ちる
  • 損害をカバーするために食材のランクを下げざるを得なくなる

などの悪い変化が出てしまう場合も…。

そうなれば当然、お客さんからの評価はダウンしてしまいます。

機会損失でキャンセル料は生まれる

この状況に甘んじていては、飲食店はつぶれてしまいかねません!

ですが、2018年11月に経済産業省委託調査事業がまとめた「ノーショー対策レポート」により、これからはキャンセル料金の請求がしやすくなる傾向にあります。下記からレポートを見られますので参考になさってはいかがでしょうか。

 

No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート

引用:経済産業省ホームページ

飲食店を利用する側としては「一口も食べていないし、店に行ってもいないのに!どうしてもキャンセル料を払わなくてはいけないのか?!」と思うかもしれませんが、前述の通り飲食店側は無断予約キャンセルというのは「店側が売り上げを得る機会(チャンス)をつぶしている」ので、キャンセル料が発生するのも当然と言えるのではないでしょうか。

一般的にはホテルの宿泊予約や、航空券の予約のキャンセルにはキャンセル料が発生することが知られていますね。

それも同じ理由で「機会損失が発生した」という判断でキャンセル料が発生するわけですから、飲食店はそれを得られないというのがそもそもおかしいと言えるでしょう。

ノーショー(無断キャンセル)は損害賠償も可能!

とはいえ、飲食店側としては

「キャンセル料を請求してもいいのだろうか」

「法的な問題はないのか?」

「前例はあるのだろうか」

などいろいろと気になってしまうかもしれませんが、法的にも認められた権利ですので請求は可能です!

ただし、キャンセル料を請求するためには次のような条件がそろっていることが必要になります。

  • 事前に「キャンセル料が発生する可能性がある」ことを利用者に伝え、了承を得ている
  • 予約した人に確実に連絡がとれる:具体的には電話番号だけでなく住所もわかっているかどうか
  • 利益相殺していない:利益相殺とは「損害があったが、それを他の形でカバーすることで利益を上げることができた」ということを指します。例えば予約客のために仕入れた食材を他のお客さんに提供した結果、材料が無駄にならなかった場合は「利益相殺できている」と判断される可能性があります。

詳しくは下のページで解説していますので、ぜひご一読ください。

まとめ:機会損失は大きな痛手である!

予約が入っていなければ席に通せたお客さんを断らなければならないだけでも心苦しいのに、多くの損害を受けてしまう「予約無断キャンセル」。

泣き寝入りをするのではなく、損害賠償をできることを忘れないでください。

機会損失」はそれだけ大きな損失なのです!