「ノーショー」という言葉をご存知でしょうか?
ノーショーとは当日になってもお客さんが現れず、無断キャンセルされたり、当日電話連絡がついても「もうすぐお店に着く」と言いながらも、そのままばっくれられたりしてキャンセル料の回収ができないことをいいます。
最近はこのノーショーで大きな損失を受けてしまう飲食店が増え、国も経済面の問題として取り上げているほとです。この記事ではノーショーについての基本的な知識から、実際にノーショーされたときの被害について、そしてノーショーを防ぐとこで得ることのできるメリットや、対策について解説していきます。
「ノーショー(No Show)」は飲食店だけでなくホテル業界や航空業界などでも多く問題になっています。ノーショーの被害総額は、年間で約2,000億円にもなると言われ、たった1度のノーショーで閉店に追い込まれてしまった飲食店もあり、業界全体で深刻な問題になっています。
飲食店業界の生産性の向上を阻害するこの行為は、具体的には以下のようなことを指します。
予約時刻に現れない!無断キャンセル『ノーショー』
お客さんから予約を受け、当日までに何の連絡もなければ当然予約の準備をしますが、時間になってもお客さんからの連絡がなく姿も見せず、無断で予約キャンセルをされることです。
前金をもらっていればよいのですが、ノーショーの場合は料金が後払いで、お客さんにキャンセル料の支払の連絡をしても、ばっくれられて料金を回収できない状態のことを言います。
たとえば、3名でディナーの予約を19時に入れていたとしましょう。
時間までにお客さんからの連絡がないため、当然お店側は料理の準備を行います。しかし19時を過ぎてもお客さんは現れず、電話連絡もつかない状態でキャンセル料を回収することができません。
こうなると料理代はもちろん、サービス料やチャージ料といった、本来得ることのできる利益を丸ごと失ってしまうのです。
ドタキャンとの違い
ドタキャンは「予約していた日時の直前になって、お客さんからキャンセルされる」ことで、前日に連絡が来ることが多いです。この場合も人件費や食材の費用が損失となってしまいますが、最近はTwitterやFacebookなどのSNSで情報を拡散することで、当日他のお客さんに来てもらい、損失を減らすことができることがあります。
しかしノーショーは「No Show=人が現れない」という意味が指し示すとおり、予約者からの連絡が一切なく、こちらからの連絡もばっくれられてしまいます。当日に他のお客さんを呼び入れて損失を減らすことが難しいため、予約で得ることのできるはずだった利益をすべて失ってしまうのです。経営者側としては、ノーショーは悪質な行為と考えるべきです
ノーショー対策レポートが発表された!
経済産業省が平成29年度に外部に委託して「サービス産業の高付加価値化に向けた外部環境整備等に関する有識者勉強会」を行いました。この勉強会では、業界で問題になっているノーショーについて議論され、ノーショーに対する対策レポートを作成し一般に公開しているのをご存知でしょうか?
このレポートでは対策だけでなく、実際の損害賠償のとらえ方や算定方法などについても言及しているので、経営者として一読しておくべきです。
ノーショー対策レポートとは
ノーショー対策レポートを発行した「サービス産業の高付加価値化に向けた外部環境整備等に関する有識者勉強会」は、ノーショー問題に精通した以下のメンバーが議論し作成されています。
- ノーショー問題に精通した弁護士・大学教授
- 業界団体の代表者
- 飲食店向けのITベンダー事業代表者
- オブザーバー(経済産業省・農林水産省・消費者庁)
このレポートは、ノーショーによる飲食業界の損失のあらましや、ノーショーを防止することで得ることのできる利益・影響、ノーショーをなくすための対策だけでなく、実害に遭ったときの損害賠償のとらえ方や、キャンセル料の算定の考え方などについても実例を用いて言及しています。
飲食店経営者向けの内容となっていますが、ノーショー対策を施すことで最終的には飲食店事業者だけでなく、消費者の利益向上を目指すことができるとしており、主な内容は以下のようなものがあります。
ノーショーの被害額は年間2000億円!
この勉強会では、調査結果によりノーショーが飲食業界全体に与えている年間の損害額は約2,000億円と指摘されています。さらに通常予約の中でも1~2日前に発生したドタキャンも加えると、全体で約6%強という発生率で、被害総額は約1.6兆円に及ぶのではないかと推計されています。ノーショーの被害額の具体的な内訳は、以下のようなものがあります。
ノーショーの被害例1:料理・食材費
予約が入ればそのメニューに合わせた原材料を揃える必要があります。ノーショーの場合、直前になっても連絡がなく姿を現さない・今着くといった嘘を言ってばっくれるてしまうので、すでに調理してしまったものや他の料理に転用できない食材の場合は、食材費を無駄に失うことになります。
ただし未調理の原材料で転用が可能なものは、他の料理へと転用することができるので、ノーショーの被害額には加算しません。
ノーショーの被害例2:光熱費
ノーショーされた分の料理を調理するための水道・電気代はもちろんですが、貸切り部屋の証明やエアコンなどの空調設備の電気代などが無駄になります。人数が多ければ多いほど、料理が多く、貸し切り部屋も大きくなるため、光熱費も馬鹿にできません。
ノーショーの被害例3:人件費
料理の仕込みの人件費だけでなく、ノーショー客を待つ間の待機時間の費用やサービス料を得ることができません。だからといって従業員にその時間の給料を支払わない、というわけにはいかないため人件費はそのまま損失となります。
ノーショーの被害例4:廃棄費用
予約人数が2~3人でもノーショーされてしまうと、料理を廃棄しなければなりません。これが予約人数が30~50人といった大人数の場合は、廃棄する料理の量もかなり多くなります。廃棄する量が多ければ多いほど、原材料や料理の廃棄費用がかかってしまいます。
ノーショーの被害例5:機会損失
ノーショーされることで、一番大きな損害といえるのは「機会損失」でしょう。
予約席を保持するためには、同日・同時間に予約を希望する他のお客様の予約を断らなければなりません。また直前のキャンセルなら店舗側で、当日予約を受け入れる、予約なしのお客さんの席を増やすなど、ある程度損失額を減らす対策を行うことができます。
しかしノーショーの場合は何の連絡もないため利益損失の対策が難しいです。そのため売上や回転率が下がることが予想され、ノーショーを繰り返されてしまうことで店舗側は疲弊していきます。
ばっくれを防いでお客様とWin-Winの関係を作ろう
「ノーショー対策を取ることで、お客様からのイメージが悪くなるのでは?」
ノーショーに頭を悩ませていても、このような心配される経営者も多いです。しかし実際には、ノーショー対策を取ることで、お客様側は大きなメリットを受けることができます。
店の予約が取りやすくなる!
ノーショーされるのは、あまり知名度のないマイナーなお店や、小さな飲食店の身だけだと思っていませんか?
実は全国的に有名になっているような人気店でも、ノーショーの被害が相次いでいます。ノーショーがなくなれば減った分だけ、他のお客様が予約を入れやすくなります。
コストパフォーマンスが良くなる!
ノーショーが減ることで店舗の損失額を減らすことができるため、その分良い食材を仕入れる資金を作ることができます。仕入れ資金を増やし良い食材を仕入れよりよい料理を提供するこで、お客様の満足度があがり店舗の評価が高くなっていきます。
サービスの品質を向上できる!
ノーショーがなくなることで利益を得て資金が増えると、人件費を増やすこともできるようになるので、スタッフの増員が可能となります。人員が増えることでシフトも組やすくなりますし、人員が増えることでスタッフが気持ちに余裕をもって働くことができるようになります。
従業員の給与が上げられる!
店舗の利益が上がれば、当然スタッフの給料を上げることができ、職場環境・スタッフへの待遇改善も行うことも可能となります。職場環境や待遇改善を行うことで、スタッフの労働意欲も高まり、その結果より良い接客やサービス提供へとつながることも期待できます。
設備投資の余裕も!
店舗の売上が上がり資金に余裕が出てくれば、調理設備などを新しいものに入れ替えることも可能です。店舗にあった新しい設備を取り入れることで、効率の良い調理を行うことができるようになり、回転率を上げることもできるようになります。
ノーショーを防ぐには!
ノーショーを防ぎたい、というのはどの飲食業者も思ってることでしょう。しかし予約時にノーショー客かどうかを見極めるのは、不可能に近いと思っていませんか?
実際にノーショーを100%防ぐのは難しいですが、軽減するための対策はあります。
ポイントは、お客様とのコミュニケーション
予約を電話やメールなどで受けつけている場合は、『お客様とのコミュニケーション』が、ノーショーを防ぐ最大の対策となります。お客様と予約についてのお話を進めていく中で、連絡先をきちんと聞くことは最重要ポイントでしょう。
また電話応対しているスタッフの対応がいい加減、高圧的な場合、それだけで信頼を失ってしまい、キャンセルやノーショーされてしまうこともあります。きちんとした接客を行い予約を入れたお客様の信頼を得ることで、予約キャンセルやノーショー率を下げることができることが期待できます。
防止サービスも続々登場
インターネットが普及している現在は、ネット予約システムだけで予約が完了する飲食店も多いです。この場合、よほどのことがない限り店舗側から連絡を入れないというケースが多く、ネット予約では無断キャンセルされやすいです。
飲食業界へ予約台帳サービスを提供している企業なども、このノーショーに対してさまざまな対策を始めています。またノーショーによる被害補償サービスなども登場しています。代表的なものには、以下のようなものがあります。
予約システムでのノーショー対策
ネットの予約システムはコストがかかる、と思っていませんか?
実際毎月利用料金を支払う必要はありますが、ネット予約システムでノーショーやドタキャンを防ぎやすくすることができます。
・前受金(デポジット機能)
株式会社トレタではWeb予約を行ったときに、前受金を預かり、無断キャンセル防止・キャンセル料の徴収を行います。前受金を支払ったお客様には特典設定も可能なので、双方にメリットがあります。
・事前決済サービス
株式会社VESPERが提供している「テーブルソリューション」では、ネット予約時に決済を行ってしまう「事前決済」と、予約時にクレジットカード情報の入力だけの「与信型」を選択可能で、キャンセルされた場合でもキャンセル料を支払ってもらうことができます。
・ポケットコンシェルジュ
株式会社ポケットメニューの提供している「ポケットコンシェルジュ」は、ミシュランガイドなどに掲載されている有名店や高級店向けのサービスですが、事前決済を採用しています。
・予約お知らせくん
株式会社シンクロ・フードの提供している「予約お知らせくん」は、予約前日にお客様に予約内容のリマインドメールを送信するシステムです。前日に予約確認メールを送ることで、お客様に無断キャンセルされくくなることが期待できます。利用料金は無料なので、ネットの予約システムを利用している飲食店は導入を考えてみてはいかがでしょうか。
ノーショー被害の補償サービス
ネット予約システムを提供している一部企業では、特定条件があるものの無断キャンセルなどの被害に遭ったときに、被害額の保障を提供しているところもあります。
・favyノーショー保証サービス
「favy予約」を利用したユーザーのみ対象ですが、1回につき50万円の上限で、キャンセル料を100%保障してくれるサービス。加入後1年ノーショーがなかった場合は、「favy」に保証料相当の記事広告掲載可能。
・お見舞金サービス
株式会社トレタでは、ノーショーだけでなく災害などで休業し損害が発生したときに、一定金額をお見舞金として受け取れます。ただし無条件で受けれるというわけではなく、トレタのデポジット決済利用時に当日キャンセル料を10,000円以上に設定しているなどの条件があります。
まとめ:NoShow(ノーショー)防止で飲食業界全体に利益!
飲食店業界にとって深刻な問題となっているノーショーは、飲食店だけでなくお客様にとってもデメリットになるものです。しかしきちんと対策を取ることで、飲食店側は利益を得て、お客様に対し満足のいくサービスを提供できる環境を作ることができます。
またお客様側はノーショーがなくなることで予約を取りやすくなり、満足のいくサービスを受けることができると、飲食店とお客様双方にメリットが発生します。
経済産業省などの関係省庁、そして民間企業が一体となってノーショー対策に取り組みを始めています。ノーショー対策を行い被害を減らすことで、企業単位ではなく飲食業界全体として利益を上げることが可能で、飲食業界が活気づくことが期待できます。ノーショーを減らすためにも、予約システムを利用したり、予約方法の見直しなどを考えてみましょう。